「クールなURIは変わらない」が答えないこと

ウェブには「クールなURIは変わらない」という有名な言葉がある。

要約すると「URIを変更したりファイルを削除したりするとリンク切れが起こる。訪問者が404 Not Foundの文字列を見て不快な気分にならないようにしよう。」ということだ。W3Cの精神に忠実な人たちは、絶対にこれを守ろうとする。一度公開したリソース(文書、画像など)は削除しない、URIを変えるのなら.htaccessを使ってリダイレクトさせる。なんと言っても、「クールなURIは変わらない」を書いたのがWWWの発明者でありW3Cのディレクターでもあるあのティム・バーナーズ=リー氏である(その上、日本におけるセマンティック・ウェブの第一人者、神崎先生がそれを翻訳したのだ!)。「クールなURIは変わらない」の概念が大変重要であり、その文書が非常に大きな影響力を持つことは、容易に想像がつくであろう。

しかし、「クールなURIは変わらない」=「絶対にリソースを削除・移動しない」という意味ではない。例えば、著作権者に無断で転載された文書なら、訪問者がそれが公開されていることを望み、それが削除されることで欲求不満に陥るとしても、削除されるべきだ。理由は言わずもがな、無断転載は著作権法という法律に抵触する行為であることだ。

では違法行為でなければ、一度公開されたリソースのURIは変更されるべきではないのか。このようなケースはどうであろう。「自分が昔書いた文書を読み返してみたらあまりに稚拙な内容で、もう誰にも読まれたくない。削除したい。」この思いに駆られたことのある人は結構多いのではないかと思う。私などは常にこのような状態であり、「削除したい、でもクールなURIのためには…」と葛藤し続けていた。

URIはなぜ変更すべきではないのか、クールなURIは変わらないは次のように答える。

あなたがサーバー上のあるURIを変更したら、それを古いURIにリンクしている人々に完全に知らせることは不可能です。利用者は通常のウェブページからリンクしているかもしれません。あるいはあなたのページをブックマークに登録しているかもしれません。友人の手紙の片隅に書かれたURIを見てサイトを探しに来るかもしれません。

もしリンクを辿ってみてそれが働かなかったら、たいていの利用者はサーバーの所有者に対する信頼感を失ってしまいます。それに、利用者は欲求不満に陥ります - 気分的にもそうだし、なんと言っても目的が達せられないのですから。

こんなにも多くの人々がいつもリンク切れに対する不満を述べているのですから、その問題ははっきりしているはずだと思いたいです。さらに、ドキュメントが無くなっているということは、そのサーバーの管理者の名誉にとっても大きなダメージであることが、みんな分かっていると思いたいです。

ここで述べられていることは、「404 Not Found」を見た訪問者の欲求不満と、それを起こしてしまった製作者の信頼感の喪失である。製作者の不満については何も触れられておらず、文面どおりこれを受け止めるのなら「URIを変えなければみんなハッピーになれる」と言っているようにも見える。

製作者の不満については全く答えない。ここでいつものやつである。「W3C(側の連中)は訪問者への配慮には事欠かないが、過度な負担を製作者に押し付ける。」W3C的に製作者と訪問者は対等ではないのだろう。

最初の問題に戻る。「自分が昔書いた文書を読み返してみたらあまりに稚拙な内容で、もう誰にも読まれたくない。削除したい。」「稚拙な」と思うのは製作者の主観によるもので、もしかしたらその文書に感心している人がいるかもしれない。この認識のギャップは埋められない。「これは削除してよし」「これは残すべし」と客観的な判断を下してくれる審査官でもいたらいいのだが、いるわけもなく、製作者は自分のプライドとクールなURIとの間で葛藤し続けることになる。

以下は私の独り言なので、あまり突っ込まないでほしい。

私はクールなURIという概念自体には興味はあるが、自分自身がそれを実践しようとはあまり思わなくなった。先日はこのブログの記事をいくらか削除したし、昨日はFC2にあったブログを丸ごと削除した。「まともな文書がつまらない文書群の中に埋もれてしまうのは、訪問者にとって不利益だ」「このような文書を公開し続けることは管理者の名誉にとっても大きなダメージだ」と理由付けしながら。クールなURIに縛られ続けるのはうんざりだ。

公開された文書を削除することに対してはいろいろな反論があるだろう。普通は公開されたものを削除することはできない。政治家は自分の失言をあたかも最初から存在しなかったかのように取り消すことはできない。しかし、ウェブ上ではそれが可能なのだ。通常なら不可能なことがありえてしまうのだ。そして、よく言えば信頼を失わないために、悪く言えば自己保身のためにそれを行ってしまう。いかにも人間的ではないか。

転載元リソース情報

URI
http://elastic965.80code.com/blog/2006/11/cool_uris
作成日
2006年11月05日

2008年5月19日

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